中国のきのこは何から作る

エノキ茸栽培
中国でのえのき茸の栽培の様子

 私が中国の湖南省の田舎に行った時にスーパーでえのき茸が安かった。なんと500g=2元(約30円)だ。日本人には味噌汁はかかせない。中国であっても私は味噌汁を作る。味噌汁好きの私にとってえのき茸が安かったのはうれしかった。広州ではえのき茸が500g=8元(約120円)なのになぜここではこんなに安いの?思わず、中国人の友達にたずねた。「人件費が安いし、わらで作っている。」、「エ〜わらで本当!」。これってもしかして、ビジネスチャンス!日本ではおがくず(木を切った時に出る木の粉)で作っている。私の家では農家をしている。わらはただで手に入る、ただのものからうまいえのき茸が作れるなんてすごいと思った。わらからどうやってえのき茸が作られるのか見てみたい。私は友達にえのき茸を生産している知り合いはいないのと聞いてみた。友達の同級生の運送屋に心当たりがあるらしい。えのき茸の作り方を教えてくれるところが見つかった。でも、授業料を取るらしい。運送屋がある農家に案内してくれた。授業料の交渉は本人同士でやってくれと言うことだ。「中国の物価からすると200元(3000円)か?」と私は友達に聞いた。「200元じゃ、子供のお年玉だよ。最低400元(6000円)かな。」と友達が言った。「じゃ、400元でまず交渉だ。」私が言った。この農家の言い分は、こうだ。10年前に長沙(湖南省の省庁所在地)まで電車で言って500元で勉強してきた。10年前に比べれば物価も上がっているし、電車賃もかかっている。何と言っても10年間のノウハウがある。だから1000元(15000円)だという。沈黙が流れて友達がもっと安くしてくれと言ったがこの農夫は譲れないと言う。しかたが無いのでこちらがおれた。後で友達に聞いたらもっと粘れば800元にできたと言う。中国人の表情はホントに読めないなあ。
 いよいよ教えてもらう事になった。私と友達と農家に行った。友達に農夫から聞いた事を書かせて、私はデジカメで写真を撮った。ここの農家では綿の種殻でえのき茸とヒラタケ(しめじ)を栽培していた。白い綿の表面に黒い種殻が付く。手で種殻を採るので種殻と綿が一緒に採れる。種殻だけではなく綿も含んでいるので綿に空気が含まれる。それでキノコの材料として優れている。スーパーで見たえのき茸は綿種とわらを組み合わせて栽培していた。ここの農家は、わらをマッシュルーム栽培に使うので、えのき茸とヒラタケは綿種殻を使っている。わらと綿種殻以外にも使える材料があるそうだ。廃綿、麦わら、とうもろこしの殻も使える。後で調べたのだがとうもろこしの殻を使う方法は日本の某キノコ栽培メーカが特許を取っている。補助材料もいろいろな物がある。米ぬか、ふすま、とうもろこしの粉、尿素などがある。材料の研究だけでもおもしろそうだ。
綿の種殻
綿の種殻を取り出す様子

 キノコの栽培は、大きく分けると次のような工程になる。材料の調合→袋またはビン詰め→殺菌→接種→発芽操作→収穫となる。中国の農家ではビニール袋を使った、栽培が主流である。ビニール袋の栽培の長所は、@口が広いので収穫量が多い。Aビンに比べ安いので初期投資が少ない。B使い捨てなのでビンのように使用後の消毒作業がいらない。キノコ栽培には設備が必要なのだが、この農家は常圧殺菌槽と接種箱を手作りしていた。日本では工場のような空調設備の中で温度・湿度を管理して栽培しているが、中国では自然栽培が一般的である。だから、スーパーでえのき茸が安かったのは自然栽培のえのき茸が多く出回る時期だったので安かったのである。広州市でえのき茸が高いのは、広州市は気温が高いのでクーラーをかけないといけない。電気代、設備償却費の分、高く売らなければならないのである。余談ではあるが中国のしいたけ菌は早く成長するし、木以外のもので栽培しているようだ。確かに、中国のしいたけはキノコの匂いが弱い。
  夜、帰ろうとしたら泊まっていけと言う。どうやら、ごちそうしてくれるらしい。授業料が高かったのでサービスという事かな。中国の白酒は日本酒と同じ米から作られるが蒸留酒なのでアルコール度が高い。30度〜60度もある。アルコール度が高いほど高級なようだ。ストレートで飲むのでけっこうきつい。農夫はアルコールは飲めないので豆乳を飲んでいる。料理は豚骨のスープに大きくなりすぎたマッシュルームをスライスして入れてある。マッシュルームはおとなのげんこつより大きい。かなり美味い。中国のえのき茸は昔からある茶色い物と日本と同じ真っ白い物がある。真っ白いえのき茸の方が人気があり、値段も少し高い。日本のえのき茸と中国のえのき茸を掛け合わせた品種らしい。日本の品種に比べ腰がある。シャキシャキした食感である。中国人は歯ごたえがある方が好きなのである。
 この農夫は湖南省の科学技術研究員のメンバーらしい。中国のきのこ業界紙を見せてくれた。各社、いろいろな品種のキノコを開発しているし、設備も販売している。高圧殺菌槽、液体接種の機械もある。中国のキノコ業界もなかなか進歩しているな。キノコは健康食として中国でも消費が伸びている。帰りにオレンジをお土産にもらった。この農家ではオレンジも栽培している。
 中国の田舎では今でもまきで米を炊いたり、料理を作ったりしている。木は大事な資源なのである。だから、中国では木を材料としないでキノコを栽培する方法が発達したのではないかと思います。色々な材料でキノコ栽培、中国おそるべし。

マッシュルーム
中国でのマッシュルーム栽培の様子

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